フラーテイシャスミスの2018

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第3弾はフラーテイシャスミスの2018。

2億超えの値がついた今年の2歳馬における有力候補。兄にはダートの活躍馬であるベストウォーリアがあります。

このベストウォーリアの全弟にあたり、本馬の1つ上の兄であるテイルウォークは1億円ほどで取引されています。母の仔は高額で取引される傾向。

 

彼はこんな馬

とりあえず、間違いのない事実を並べましょう。

 

基本情報

馬名 ブレイブライオン

性別 オス

生年 2018年4月30日

調教 西村真幸厩舎

生産 ノーザンファーム

 

ポジティブなポイント

  1. 兄にベストウォーリアがある
  2. ディープインパクト×Mr. Greeley×Robertoはミスパスカリの仔で実績あり
  3. Queen of Lightの家からはダノンプレミアムが出ている
  4. 9代母AbsurdityはDoxaの全妹
  5. 2億円超えで取引された高額馬

 

ネガティブなポイント

  1. 非サンデーの構成で成功した繁殖とディープの相性は保証されない
  2. 素晴らしい一家から出ていても枝が優秀とは言いづらい
  3. オーナーが方針を転換したので過去の事例が参考とならない
  4. 配合パターンも特殊である

 

魔のGone West

世の中には色んな血統がありまして、それぞれの個性を指して「変態」とするのは愚かなことですが、血統ばかり見ている人間がそれに気づいた時、それは相当な新鮮さを伴ったビューティフルな出来事なのです。

 

あって当然のものがない

Gone Westの血が作り上げる魔性の一つに「非Mahmoud」というものがあります。全てがそうではありませんし、それが確実に成功するパターンということもないでしょう。

しかし異系というものはそういった積み重ねの先にあるもの。まして現代における配合ならばベストを目指した結果とも言えます。「Mahmoudはいらない」と信念を燃やす生産者はいないでしょう。

走る馬を作ろうとすれば「如何に流行血統を取り込むか」に腐心するのが普通です。Mahmoudを取り込まないということは、Northern DancerもHaloもGraustark=His Majestyも取り込まないということ。

 

似て非なるもの

「Mahmoudを引かないとはいっても、それはNasrullahやRoyal Chargerと大差ないよね」という意見もありましょう。反論し難い。

世には様々な血統がありまして、実際にNasrullahと似たような扱いを受けているRoyal Chargerもありますし、Mahmoudにしてもそれは同様。そういった血統を積み重ねて「非Mahmoudだから一味違うんだよ」とするのは難しいでしょう。

ただ、流行血統というものに限定しますと話は異なります。Northern DancerはMahmoudであって、Gold DiggerはNasrullahであって、Hail to ReasonはRoyal Chargerなのです。

 

系譜

漫画家の師弟関係みたいなものだと思います。弟子もデビューしたてのころは師匠の名残が残っているものですが、時間が経つと差が出来ます。

更に弟子が師匠の立場となって弟子を送り出すこともあり、孫師匠と孫弟子では根本的なところで差がありましょう。一切の共通点を持たないこともありえます。

だからこそこういった繁殖は父の産駒における傾向から外れたタイプを出しやすい。ディープはNorthern Dancerのインブリードが当たり前ですし、 過去にそういった成功パターンも見られませんが、当たれば間違いなく大きいでしょう。

 

前例はなし

母が非Mahmoudのディープインパクト産駒に活躍馬はありません。

非Nasrullahとなると、父であるディープもそうでありますから、産駒自身が非Nasrullahということとなります。このパターンはリアルインパクトやワールドプレミア=ワールドエース、トーセンレーヴ=ジョワドヴィーヴルなど。

非Royal Chargerは多数。Halo・Roberto・Sadler's Wells・Sir Gaylordなどを持たない馬の殆どが該当します。ジェンティルドンナ・ショウナンパンドラ・フィエールマンなどなど。

 

 

 

サンデークロス論

ちょいと話がかっとびますが・・・多分、収束されるはずです。

サンデーサイレンスは究極的にDiscoveryとPompey=Laughing Queenとの出会いが全てで、Native DancerやTom Fool、Bold Rulerと出会わずにG1を制した産駒はありません。

つまりサンデークロスってのは「サンデー×Dicovery×Pompey=Laughing Queen」の組み合わせクロスであることがほとんどです。組み合わせでなくとも、Native Dancer・Tom Fool・Bold Rulerを使わない構成によるサンデークロスは見たことがありません。(とんでもない異系配合です)

基本は「Sadler's Wells・Mr. Prospector・Seattle Slew・Roberto・Buckpasser」などを構成要素とするものですから、Flambetteと上述の要素を練り込む様な形で成功していると言っても良いです。

 

Danzigとサンデークロス

血統を愛している方はお気づきでしょうけれども・・・上述の成功パターンに使われるものは、Danzigが愛した血統でもあります。

Sadler's Wellsとは流石に遠いんですが、ガリレオ×デインヒルの成功があります。国内ではエルコンドルパサー×Danzigのサクラオリオン、近年にはスクリーンヒーロー×カーネギーのモーリスが。

そして今年に現れた無敗の二冠馬その1、デアリングタクトもこれに当たります。日本におけるDanzigの最高傑作とも言うべき配合でして、種牡馬Danzigの抱えたニックス血統がこれでもかというほど盛り込まれています。

つまり、デアリングタクトの成功によってDanzigの好配合パターンとサンデークロスの好配合パターンが同じであることが実証されたのです。

 

Almahmoudによるもの

Danzigのやっていることは徹底したNatalma弄りですから、このニックス血統ってのはNatalmaとの関わりが密接であります。

「サンデークロスの成功パターン=Danzigの好配合パターン」かつ「Danzigの好配合パターン=Natalma弄り」ですから、サンデークロスの成功とはNatalma弄りであると言えます。

よって「サンデー×Discovery×Pompey=Laughing Queenの組み合わせクロスの成功パターン≒Natalma弄り」です。Natalmaの父Native Dancerが「Discovery×Pompey」の組み合わせを持ちますから、つまるところ、サンデークロスってのはAlmahmoudが全ての起点にあるのです。

それは「4分の1サンデー・4分の3Northern Dancer」にも同じことが言えるわけで、ディープインパクト産駒のほとんどがこの構成を取り、それで成功している以上はAlmahmoudのクロス、ひいてはMahmoudのクロスってのは非常に大きな意義があると思われます。

 

おわりに

何にでも例外はあります・・・と言えば身も蓋もない。しかし大変なギャンブル配合であることは確かでして、ブレイブライオンをPOGにおける安牌とすることはとても難しいものです。

日本で成功しているGone WestはNorthern Dancerを絡めているのが基本で、Speightstownにしてもこのパターン。北米の短距離馬として完成させるにフラーテイシャスミスは優秀であるかも分かりませんが、日本の芝を走るには不都合が多いと言えるでしょう。

また・・・ディープインパクトの本質を考えるべきかもしれません。この大種牡馬は「4分の1サンデーサイレンス・4分の3Northern Dancer」時代の申し子とも言えまして、大々的にこの配合形を初めて成功させたのです。

Mahmoud的である繁殖を相手にMahmoud的な産駒を輩出したことが彼の成功を支えたかは分かりません。その受け止め方が自然だとは思いますが、こういう例外的な配合が走るから競馬は面白いのですよね。

あ、それとGone Westが非Mahmoud筆頭みたいな書き方をしていますけれど、例えばティンバーカントリーも非Mahmoudでして、コパノリッキーの母コパノニキータが非Mahmoudです。他にララベルなんかの例もありまして、やはりダートで成功していますね。

Mr. Prospector系って非Mahmoudの総本山みたいなところはあって、だからKingmamboやエンドスウィープみたいな血統の方が日本芝では成功しやすいのですよね。

それは噂のUnbridled's Songも同様です。これほどMahmoudを詰め込んだ非Northern Dancerの血統はサンデーサイレンスくらいじゃないっすかね。

 

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