POGは終わらない

POGを安全圏から血統により攻略

アヴニールセルタンの2018

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第2弾はアヴニールセルタンの2018。

残念ながら母は早世してしまい、昨年に産まれた仔がラストクロップとなりました。姉のデゼルがフローラSを強く勝ちきっただけに、注目度の高い血統です。

 

彼女はこんな馬

例によって情報の整理です。

 

基本情報

馬名 オヌール

性別 メス

生年 2018年5月10日

調教 友道康夫厩舎

生産 社台ファーム

馬主 社台レースホース

 

ポジティブなポイント

  1. 母アヴニールセルタンは実績十分の名牝
  2. 全姉が優秀な内容で重賞を勝っている
  3. 社台ファームは坂路改修で上昇気配

 

ネガティブなポイント

  1. ディープ×Blushing Groomの牝馬はややこしい
  2. Mark of Esteemの牝馬はややこしい
  3. 意味のわからないSir Gaylordの引き方をしている

 

ホントややこしい

アヴニールセルタンは仏1000ギニーと仏オークスを勝った馬でして、フランス競馬においてその年最も優秀な3歳牝馬であったと言えるでしょう。血統の構成についてケチをつけることは出来ませんし、繁殖としても優秀な結果を初年度の産駒から見せました。

 

ややこしさ その1

ディープ×Blushing Groomが悪いということはありません。ヴィルシーナ=ヴィブロスやスマートレイアーといった例があります。

つまり「逃げることも出来る」「潜って差すことも出来る」「先行から抜け出ることも出来る」ということです。

 

ややこしさ その2

Mark of Esteemが悪いということはありません。ディープとの組み合わせから活躍馬は出ていませんが、ファインニードルやダノンシャンティの例があります。

つまり「馬群が嫌い」「大外から飛んでくる」「差し競馬身上」ということです。

 

ややこしさ 総括

MachiavellianとNureyevとBlushing GroomとGlorious Song。ははぁ、ヴィルシーナ=ヴィブロスみたいなディープ産駒なんだな、とはなりません。

逃げ・先行・好位という競馬を奪われた上で、それに必要な気性はオンとなっています。その上で競馬ぶりはMark of Esteemなのです・・・。

 

Mark of Esteemってどういう血統?

Mill Reef父系における主流血統。零細の父系なだけに独特な血統構成をしていまして、Vaguely Nobleとヴェンチアが5代内に収まっている例は決して多くありません。

母系はFlambetteで、なかなか珍しいものです。枝はGalletteでして、これはLa Franceの全妹。Flares=Omahaの母Flambinoの半妹でもあります。

Flambetteは仏系の血統でして、本馬の母系は北米血統と英愛血統が累代。英ダービーにおけるサドラー系最強伝説を崩した種牡馬でもあります。

 

消耗戦の追い込み血統

Mark of Esteem産駒Sir Percyは前が併せ馬で粘り込むところを一気に最内から差し込み、英ダービーを制しました。残り100mほどで一気に差し切った内容です。

他の例は昨年の凱旋門賞。ハイペースの中で抜け出したエネイブルを、残り100mほどでヴァルトガイストが一気に差し切りました。

国内においては上で挙げた様にファインニードルとダノンシャンティの2頭。これらの勝ちっぷりも「ハイペースを残り100mで一気に差し切る」というもの。

 

縛る血統

絶対にそうでなくてはならない、というのがMark of Esteemです。ダノンシャンティ産駒のスマートオーディンも阪急杯では大外をぶん回して一気に差し込みました。そうでなくては配合的に成功しないのです。

馬群に潜って差し込む様な馬ならば大成しません。大成するのは差し競馬オンリーの馬群嫌い、消耗戦バンザイな馬です。

 

姉から思う破綻

ここで問題とされるのは全姉デゼルの勝ち方です。フローラSはドスローの展開でして、それを格違いの末脚で破りました。

馬群嫌いで差し競馬オンリー・・・ですが、ドスローで格の違いを見せるのは少し違うように思えます。

 

父母間Sir Gaylordインブリード

スローをとんでもない末脚でねじ伏せるのはSir Gaylordらしい競馬です。

さじ加減が難しいのですが、Mark of Esteemというのは消耗戦の舞台に上がる血統なのです。Sir Gaylordは消耗戦の外から差し込む傾向があり、例えばヴァンセンヌは鋭い末脚を見せながらも微妙に差しきれないタイプでした。

 

あやふやなSir Gaylord

血統の引き方に正悪はありませんが、アヴニールセルタンの5代母Gay Franceの様なものは珍しい。

現代に残るSir Gaylord直子というのは基本的に北米血統なのです。Gay Franceは名の通りにフランス生産の母を持ち、母父・母母父・母母母父・母母母母父はフランス生産の種牡馬です。

なぜSir Gaylordに北米的であることが求められるかと言いますと、ある程度までスピードに特化しなくては英愛と結びついたときに困るためです。

最も適切な例はおそらくAlzaoとBurghclereです。この2つの血統が結びつくことは正悪における正というべきで、その結果がウインドインハーヘアという名繁殖なのです。

Gay Franceにそれは出来ません。アヴニールセルタンの累代は柔らかなクッションを挟みながら英愛や北米と接触した様なもの。

あくまでもアヴニールセルタンは仏血統なのです。

 

仏血統とは

フランスというのは歴史的にも北米や英愛の血統を取り込んだもので、ドイツほど突き抜けた存在ではありません。

その割にはフランスらしさが抜けきらない面白さもありますし、一部の変人が取り組んだであろう、ドイツなみに突き抜けたフランス血統も存在します。

それはつまるところ、日本と同じ取り組みをしているからに他なりません。

 

ややこしき友好

英愛ってのはフィッシュアンドチップスです。北米ってのはハンバーガーです。

日本はそれでモスのフィッシュバーガーを作るわけですが、フランスもやっぱりフィッシュバーガーみたいなのを作るわけです。けれど人種が違うから味付けも違います。

アヴニールセルタンってのはフランスのフィッシュバーガーでして、日本人はこれ以上手を加えることが出来ないから、そのまま食べるしかありません。

距離適性の話です。日本馬とフランス馬の距離適性は似ています。その上で材料は同じ。けれど味付けは決定的に違っています。

だからアヴニールセルタンはアヴニールセルタンとしか食べるしかありません。日本にとってフランス血統は根本的に作り変えることの出来ない難しい血統なのです。

 

血統を育むもの

根本的に作り変えられないフランス血統がどの様な場所で育まれたかと言いますと、それは凱旋門賞で学んだものをそのまま流用してよいと思います。

自然のままにある芝。まともに整地をされていない馬場。やたらと長い直線。緩やかなコーナー。イギリスと同じナチュラルなコースでして、日本の「作られたコース」とは違います。

しまいにゃ「直線だけで構成される短距離戦」です。日本人にとっての短距離戦とは機動力を試すものに近く、それは北米的な考え方なのです。

この様な場所で育まれたのがアヴニールセルタンです。そして、アヴニールセルタンの2018はこの様な適性を発揮することとなります。

 

まとめ

私は輸入繁殖において、フランス生産のものをあまり信用しません。英愛や北米の方がよっぽど日本向きです。大体はディープで根本的に作り変えられます。

近年で最も成功した仏繁殖はリリサイドですが、これとて殆どが英愛の血統です。95%くらいが英愛血統と言っても過言ではなく、アヴニールセルタンほど独特な特徴は持ちません。構成する主流血統は日本の種牡馬にとっていじりやすいものばかりです。

ダンスールファビュルー≒Ajdalを上手に弄くり回して日本競馬へ持っていく手はあるでしょう。Kay Partnerの近親ですから、ダンスインザダークを利用することで可能なはず。

しかし名牝の有するMark of Esteemという表現を弄るのは愚策というべきでしょうし、これを生のままにして日本競馬へ流用しなくてはアヴニールセルタンの甲斐がありません。

今後現れる種牡馬次第では、アヴニールセルタンの娘たちが大きく飛躍することもあるでしょう。デアリングダンジグの輸入が正義であったとされたのは、つい先日のことなのですから。

なお、リリサイドに見られるミラーズメイトはMark of Esteemと同じ「Mill Reef×Vaguely Noble」です。アヴニールセルタンが第二のリスグラシューを産んで行ったのかは、分かりません。

そういう考え方もありですよね~。

 

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