2020年~2021年POGを考える記事第1弾はクロウキャニオンの18。
ディープインパクトの正妻からとうとう大物が出たか?と話題の一頭です。カミノタサハラ以来となる500キロ超えの馬格も異彩を放ちます。
そんでは、冷静に楽しく考えましょう。
彼はこんな馬
まずは当たり前の情報を整理しましょう。
基本情報
馬名 ヨーホーレイク
性別 オス
生年 2018年3月19日
調教 友道康夫厩舎
生産 ノーザンファーム
馬主 金子HD
ポジティブなポイント
- デビュー率100%で勝ち上がり率100%のクロウキャニオン産駒
- カミノタサハラ以来となる500キロ超の馬格
- 金子オーナー×友道師のスーパーコンビ
- 育成牧場の評価がすげぇ良い
ネガティブなポイント
- クロウキャニオンの仔は基本的に晩成
- クロウキャニオンの仔は一発がない
- 友道厩舎所属馬は基本的に晩成
- カミノタサハラは脚部不安により皐月賞を最後に引退した
- クロウキャニオンも老齢の域にある
晩成の大御所
クロウキャニオンの配合を語る上で欠かせないのは5代内に留まる欧州血統の存在です。このVaguely Nobleを母系に持つ馬は、ほぼほぼ晩成で間違いありません。
母Vaguely Noble持ち×G1
3歳春までにG1を勝ったのはラッキーライラック・テイエムオーシャン・シンボリインディ・チョウカイキャロルの4頭。G1勝ち馬は全体で19頭ありますので、ダービールールにおけるPOGでは支持し難いデータです。
ただG1を勝てなくともそこそこに活躍する傾向はあります。5歳時に秋天を制したスピルバーグにしても共同通信杯と毎日杯を3着。その後プリンシパルSを制してダービーまで進みました。この全兄であるトーセンラーもきさらぎ賞を制して皐月賞とダービーに出走しています。
その他にも牝馬三冠レースの中心にあり続けたリスグラシューがあり、G1を勝てなくとも十分にPOG的な成功を収める馬は存在します。晩成の代表格であるメジロパーマーにしても2勝を挙げているわけですし。
トニービンとは違う
同じ凱旋門賞馬で晩成の血統にはトニービンがあります。
しかし大きく違う点にジャングルポケットやウイニングチケットなどを輩出したことがあります。ベガやエアグルーヴといった例もあり、POG期間における一発を秘めているのです。
同じ凱旋門賞馬でありますが、Vaguely Nobleが3歳時に勝利しているのに対してトニービンは5歳時に勝利。トニービンの方が晩成的に活躍したということですね。
ではトニービンよりVaguely Nobleの方が晩成を伝える理由を考えましょう。
配合ということ
馬をカップリングするのは生産者や馬主、あるいはアドバイザーです。ウォーエンブレムという例外はありますが、配合は人の考えるものです。
では、種牡馬トニービンを考えましょう。凱旋門賞制覇まで特たる戦績がない明らかな晩成型です。この種牡馬に対して晩成的な繁殖牝馬をあてがうかどうか?
3歳時に凱旋門賞を制したVaguely Nobleよりは、そういったケースは少ないことでしょう。よって、トニービン持ち繁殖よりもVaguely Noble持ち繁殖の方が晩成傾向にあると、ボトムラインの傾向から考えられるのです。
牝系の傾向
4-n牝系でも最有力の枝であるMargarethenの家からクロウキャニオンは出ています。国外ではTrillionとトリプティクの母娘が活躍しましたが、国内では輸入されたジェネラスやシンコウエルメスを輩出したDoff the Derbyの方が馴染みがあります。
クロウキャニオンはいずれのラインでもありませんので、Margarethenの家においては傍系というべき。しかし4代母MargravineはTrillionの全姉にあたり、3代母Margie Belleは名スプリンターTamariskの母Sine Labeとは4分の3同血の叔母姪の関係。累代に大きな差はないと言えるでしょう。
名種牡馬Caerleon
クロウキャニオンの母クロカミはCaerleonの産駒で、京王杯AHと府中牝馬Sを勝った馬。
Caerleonというとブエナビスタやレッドディザイア、ダノンシャーク、タイキシャトルの母父であり、父としてもフサイチコンコルドなどを出しました。
名血の名種牡馬らしく母系に入って優秀な血統です。シンコウラブリイやビワハイジなどの繁殖牝馬を輩出した功績は絶大。
クロカミの繁殖実績
名牝系・Carleon産駒・重賞2勝という絶対にハズレのない看板を背負ってクロカミは10頭の仔を産みました。そのうち中央で勝ち上がったのは3頭のみでありますから、まぁ、競馬は恐ろしい。そのうちの1頭がクロウキャニオンというのですから、まぁ、競馬は面白い。
つまり、クロカミの実績はクロウキャニオンの輩出に限るということでしょう。全妹のチトニアがこれ以上である可能性もまだありますが。(来年にでも初仔が出るのかな?)
ボトムラインの伝えるもの
アベレージが高くて牝馬優勢という要素は名繁殖の母を持つ名血種牡馬の典型例と言えます。ディープインパクトがそうでありますし、最近ではエピファネイアも牝馬優勢。アベレージを言えばキズナも優秀です。
極端に一発が大きい種牡馬といえばオルフェーヴルです。母グランマスティーヴンスは名牝系の出ではありますが活躍馬はドリームジャーニー=オルフェーヴルのみ。これまた一発が大きい。
ではクロウキャニオンはどちらに分類されるべきでしょうか。
名繁殖?
クロウキャニオンは受胎率・デビュー率・勝ち上がり率100%という繁殖ですので、名繁殖候補には数えられます。しかしLa TroienneやPretty Pollyを名繁殖の基本とすれば足りないと言わざるをえません。
足りないのは牝馬の質です。牡馬に出た仔に比べると、牝馬は少し格が落ちます。パラダイスリッジやラベンダーヴァレイから大物が出る可能性はありますが、それは名繁殖の母としての評価。
かといって一発が大きいわけでもありません。G1勝ち馬は出ていませんし、重賞勝ち馬とて2頭のみ。シーザリオはG1勝ち馬を3頭出していますし、ウインドインハーヘアはディープインパクトとブラックタイドを出していて、なおかつ曾祖母としてレイデオロを出しました。
評価を断ずるには焦燥ですが、今ひとつ足りない・・・というのは感じられます。
金のなる木
クロウキャニオンの本質は・・・金銭面の素晴らしさでしょう。
毎年きちんと仔を産んでくれるってのがまず素晴らしいことですし、その上でデビュー&1勝が確実。その後も走り続けて1億程度はきちんと稼ぎます。クロウキャニオンって宣伝や営業もなしに黒字を垂れ流せる繁殖なのです。
その上で種牡馬ディープインパクトの価値も高められる、ということで・・・。ここがちょっとPOG的にどうなのかなぁと思うところですな。
G1を意識した配合?
「ディープの種で黒字となる上に、ディープ自身の価値を上げられる。」ということですので、ディープインパクトとクロウキャニオンに関わる契約の詳細は知りませんが、オーナーと牧場のどちらに権利があったとしても、この配合となりましょう。
ディープインパクト×クロウキャニオンを否定することは何人たりとも出来ませんが、それを絶対とすることも同様です。
つまり「ディープでG1馬を出せることは否定できないし、他の種でG1馬を出せることも否定できない。」という、まぁ、アホな話です。そんなの当たり前ですから。
そもそもスーパー繁殖なら相手がなんだろうとG1勝ち馬を出します。シーザリオがそうですもの。
ここで一つ間違いないことは、クロウキャニオンのパフォーマンスは仔を種牡馬へ祭り上げるだけのものではないということです。「クロウキャニオンは凄い!この血を取り入れたい!」という生産者が多ければ、どこかから種牡馬のオファーがあるでしょう。
繁殖の価値
種牡馬というのも凄いギャンブルですし、弟から三冠馬でもでなければ重賞1勝(未満)馬が種牡馬入りすることはないでしょう。
それでも「これは未完の大器だ」と思わせられたならば、シルバーステートやワールドエースのように種牡馬となることは出来たでしょう。クロウキャニオンの仔はそういったことになりませんでした。
クロカミとミルドの繁殖実績が枷なのでしょう。この2頭がより良い結果を出していたならば「名牝系の素晴らしい枝葉である」として、クロウキャニオンの仔は優遇されたかも分かりません。
実際の評価は「素晴らしい牝系の傍系から出たぽっと出の好繁殖」というものでしょう。
まとめ
牝系が牝系ですからぽっと出の好繁殖でもG1勝ち馬を出す力はあると思います。カミノタサハラという全兄もありますし、重賞勝ちを意識して指名できる馬ではないでしょうか。
柔らかさを特筆事項とされているだけに、本格化は古馬となってからで間違いありません。ただ、ディープもオルフェも本格化したのは古馬となってからですし、三冠を獲るのに早熟性は不必要とも考えられます。
友道師は晩成の中長距離馬を育てることが得意ですが、ワグネリアンとマカヒキを出したダービートレーナーでもあります。この2頭は古馬となってからもG1にて活躍していますから、これと同じ路線を期待することも出来そう。
クラシックを勝ってから、更に本格化する馬は多くもありませんが少なくもありません。ダービーにそれを求めることは難しいのですが、皐月賞ならばテイエムオペラオーなどの例があります。
つまるところ、モノホンならG1くらい勝てるでしょうと。
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